『性器雇用』ゲームシナリオより抜粋



【美香】「滅私奉公っ!」

……うん。まずは噛まずに言えたわ。

わたしはその文言が書かれた紙を広げ、社是の内容を、声を張って言葉にしていった。

【美香】「我々、天門製薬の社員一同は、いかなる時も会社に奉ずることを第一義とし……」

新入社員たちは微動だにせず、気をつけの姿勢で、真剣な眼差しをわたしに向けている。

奥の方の列は先輩社員たちだ。姿勢も楽な感じで、あまり緊張は感じられない。

【美香】「詭弁に職責を全うし、質実と礼節を重んじ……」

【美香】(…………んっ……?)

【美香】(あれ……な、なんだろう……何か、違和感が…………)

会場から、妙な視線を感じる。それもひとつやふたつではない。

【美香】「いかなる時も、己の心を、肉体を会社に捧げ、滅私奉公の精神を忘れずに……」

【美香】(っ……確かに感じるっ…………)

大勢の視線が、まとわりつくようにわたしを見つめている。

新入社員の列じゃなく、奥の方……先輩たちからの視線のようだ。

【美香】(え? な、何? わたし……社是、間違って覚えてる? そんなことは無いはずだけど…………)

【美香】「……滅私奉公することを、ここに誓いますっ」

……うん。とりあえず、社是は詰まらずに、最後まで言えたわね。

それにしても、さっきの視線って……今はもう、感じられないけど……さっき、確かに……。

【司会者】
「ありがとうございました。原田くん」

【美香】「………………」

何だったのかしら?