| 『性器雇用』ゲームシナリオより抜粋 |

わたしは言われた通り、全裸にレインコート一枚という、あり得ない格好となった。
そして、さらにあり得ないことに……。
【美香】
「うぐっ……うっ、ぅぅぅぅっ…………」
わたしはその服装で、真昼間のビジネス街に繰り出した。
外は快晴。あまりに場違いなわたしの姿に、すぐに通行人の視線が集中する。
【サラリーマンA】
「おい、なんだ、あの女? 変な格好して」
【サラリーマンB】
「レインコート?」
【OL】
「あれ……でも、あの子なんか……」
注意して見れば、すぐにわかるだろう。
レインコートのサイズは、明らかにわたしの体には合っていなかった。
くっきりと浮き上がった体のラインは、レインコートの下に何も身につけていないことを、如実に物語っている。
【サラリーマンA】
「あの女、下は素っ裸じゃねーのかっ?」
【サラリーマンB】
「マ、マジかよ……」
【OL】
「うん、どう見ても……な、何なの? ヤバイ人?」
【美香】
「ぅう……い、いや……見ないで……ぅぅぅ……」
羞恥を通り越し、恐怖すら感じてしまう。薄いビニールを一枚まとって、通りのど真ん中を歩いてるなんて……。
【林原】
『どうした、美香。歩調が遅いぞっ!』
【美香】
「うぐっ……か、課長……」
耳に装着したイヤホンに、課長の声が響く。
どこかから、指示を飛ばしているそうだが、こちらから姿を確認することはできない。
【美香】
「課長……む、無理です……これ以上、もう歩けません……お願いですから、会社に戻らせてください……」
レインコートの襟にも、小型のマイクが装着されている。
わたしは涙声で訴えた。通行人たちの奇異の目にさらされ、足がすくんで動けなくなってしまう。
【林原】
『何を言っている! 前回の研修を思い出せ、お前は公衆の面前でセックスまでしたんだぞ! もはや何も恐れることはないっ!』
【美香】
「そんなこと、言われても……」
それが余計にネックだ。万が一、あの時のわたしを見て、覚えている人がいたら……。
そう考えると、もう本当に一歩も動けなくなる。
【美香】
「課長、無理です……会社に帰らせて……」
【林原】
『馬鹿もん、弱音を吐くな。よし、もう歩けないなら、そこで特訓をさせてやる。今から、俺の言う言葉を、そっくりそのまま大声で叫ぶんだ』
【美香】
「え……?」
【林原】
『わたしはアホです! よし、行けっ!』
【美香】
「は、はあ?」
また意味のわからない指示を飛ばされる。
【美香】
「何ですか、それ?」
【林原】
『羞恥心を捨てるための特訓に決まってるだろ。さあ、早く叫んでみろ!』
【美香】
「そ、そんな…………」
【林原】
『出来るまで、会社には帰らせんぞ!』
【美香】
「うぐぐぐ…………」
ひ、ひどい。あんまりだ……けれど、このまま、外に放り出されているのは耐えられない。
【美香】
「……うっ……わ、わたしは、アホです……」
【林原】
『なんだ、聞こえんぞ!』
【美香】
「わたしは、アホです……」
【林原】
『聞こえん! もっと大きな声で!』
【美香】
「っ……うううぅっ! わたしはアホですーーーっ!!」
わたしは目を閉じて、力いっぱい大声で叫んだ。
【サラリーマンA】
「わあっ!?」
【サラリーマンB】
「な、なんだなんだっ!?」
当然、通行人たちは一斉に、わたしの方を振り向いた。
これまで感心のなかった人たちも、レインコート一枚の、異様な女の姿に目を向ける。
【美香】
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ……」
【OL】
「あの子、アホなんだって……そりゃあ、見たらわかるけど……」
【サラリーマンA】
「いったい、なんなんだ?」
【サラリーマンB】
「何かの罰ゲームとか?」
【美香】
「ううぅ、ぅっ……ぅぅぅぅっ…………」
これでは羞恥心を捨てる以前に、ただの危ない人である。
【林原】
『よし、よく言った! 次だ! オマ●コ!』
【美香】
「ッ……課長っ!!」
【林原】
『さあ、言えっ! 言って一人前になれっ!』
【美香】
(め、めちゃくちゃだ……)
本当にただの罰ゲームだ。
しかし、課長が納得するまで、決して許してはもらえないだろう。
【美香】
(ええいっ、言えばいいんでしょうっ!)
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