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● アスガルドの女神
【ブリュンヒルデ】「邪悪なる巨人たちよ。これ以上アスガルドの地を穢すことは、
このブリュンヒルデが許しませんっ。今すぐ呪われし北の大地にお戻りなさいっ」
海岸線、波打ち際に起立する。
【巨人兵】「オオオ……あれが、アスガルドの女神か」
【巨人兵】「噂通りの霊圧……眩しいくらいだぜ」
そこから先へは一歩も進ませないという絶対の意思が、見えない壁となって巨人の軍勢を押し返す。
【ロキ】「ぬう……貴様っ!」
ロキの血走った眼球が、ギロリと空の一点を睨む。
その実力は最高神オーディンをも越えると言われる、神聖アスガルド王国軍最強の女神。
同時にその美しさにおいても並ぶものなしと言われ、敵対する巨人族ですら見とれてしまい、
闘いを中断してしまったという逸話が残っているほどの美神。
【ロキ】「ブリュンヒルデェェ!!!!!」
ロキの表情に、それまで以上の憎悪が色濃く浮かび上がる。
こめかみの血管が脈動し、今にも血を噴き出しそうだ。
※※※
【ブリュンヒルデ】「私は純粋な神族であり、あなたは人の血を持つデミゴッド。
この壁を越えることは何者にもできません。生まれたときからの運命なのです」
【ロキ】「んだとぉぉ……そんなものは愛で乗り越えて……」
【ブリュンヒルデ】「私には神託によって決められた許嫁がいるのです。
誠に申し訳ありませんが、あなたの気持ちに答えることはできません」
【ロキ】「うるせえぇぇぇぇっ! 黙って聞いてりゃ……
そんなにあの青臭くてキザったらしいジークフリートがいいのかよぉっ!
怪我でろくに剣も握れないカス野郎じゃねえか!」
ロキがギリギリと歯ぎしりする。
ジークフリードはアスガルドの中でも特に美しい容貌を持つ男神だ。
ロキと較べればまさに月とスッポンだろうか。
【ブリュンヒルデ】「ッ! お黙りなさい!」
【ブリュンヒルデ】「ジークフリート様を愚弄することだけは許しませんっ!
その罪の苦さを噛み締めなさい!」
腰の剣をスラリと引き抜く。銀光が雷を跳ねて、目映いほどに輝いた。
【ロキ】「ブリュンヒルデ……ま、待て……落ち着け……」
【ブリュンヒルデ】「法の神『フォルセティ』の名の下に、不埒なる背徳者に正義の裁きを!」
掲げたレイピアに天空から光がサッと降り注ぐ。やがて刀身が赤いオーラを帯びた。
それを見たブリュンヒルデの瞳が、険しさを増してギラッと光る。
【ブリュンヒルデ】「神への侮辱は大罪。判決……被告人は有罪、千年の離魂の刑に処すッッ!
直ちに刑の執行を行います! 火力顕現『ドゥスダムッ』」
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